新任管理者合同研修会 細矢泰弘講師に聞く

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新任管理者合同研修会 細矢泰弘講師に聞く

2018.11.08 コラム

(株)日本能率協会コンサルティング 技術戦略センター 参事 シニアコンサルタント
早稲田大学大学院 創造理工学研究科 非常勤講師 
細矢 泰弘

新任管理者合同研修会とは

現役コンサルタントが講師を務める、日本能率協会の管理職向け合同研修です。
新たに管理職に昇格される方、新任管理職、マネジメントの原理原則を改めて見つめなおしたい既任管理職の皆様を対象に、異業種・他社(他者)交流を通じた研修で、管理職としての役割を理解いただく内容となっています。

日本企業がさらされている変化

製造業においては、ハードウェアに関する製造業が非常に高い危機意識を持っているように感じます。
彼らが心配しているのは、極端な話をすれば、製造業は国内需要に向けたものを除き、量産製造業は姿を消してしまい、開発・生産試作がメインとなってしまうということです。
量産のための生産拠点は海外移転が進むため、結果的に、国内の製造業は従来の国際競争市場におけるボリュームゾーンが抜け落ちていき、国内消費のための限られたボリュームゾーンだけが残る形となると考えられます。

ハードウェアに関する製造業が抱える危機意識はつまるところ、製造の中心がハードウェア中心からソフトウェア中心へと移行することを指します。
企業が既存の、あるいは新たに開発され公開されたプログラムを購入し、組み合わせることで新たな製品を作り出す時代になると考えています。あらゆる国の、あらゆる個人が作成したプログラムをネットを介して即座に公開・共有できるため、オフショア開発は既に時代遅れとなっているかもしれません。
各社が行う独自開発は、共通性(共有性)の低さから主流から外れ、終焉を迎えるでしょう。
今現在であっても、世界中、企業あるいは個人が自由にプログラム開発ができ、それをグローバルネットでシェアリングできる時代となっています。
今後もこうした変化が進んでいくことは疑う余地はないでしょう。
一方で、AGAという考え方があることも無視できません。AGA(アナログ・デジタル・アナログ)は文字通り情報の変換プロセスを指し、アナログ情報をデジタル情報へ変換したうえで、再度アナログ情報として出力するプロセスを指します。モノづくりのデジタル化がどんなに進んだとしても、実存する物質で構成される以上はアナログな部分は決してなくならないはずです。日本企業が積み上げてきた改善へ取り組みや技術など、デジタル化が進む中でもアナログ領域で生き残る部分は必ずあって、そこが強みとなっていくとも感じています。

しかしながら、製造業が危機に瀕しているという現状は変わらないわけです。
大企業ではコストメリットを求めた製造拠点の海外進出以外にも、企業戦略に関わる意思決定の主体が海外へ移管される例が起きています。
例えば、ある製造業では欧州に本社を置き、グローバル戦略を策定しています。日本に存在する本社であっても、欧州の本社から下されるグローバル戦略における極一部、「日本」における戦略の執行のみを求められる、という具合に製造拠点以外の機能においても国内の空洞化が進んでいるわけです。
企業戦略における意思決定でさえ、国外移転が進む中で既存のハードウェア製造業は、先に申し上げた通り、国内需要に応える性質が強くなると考えられます。現在のような国際競争を目指した大規模な製造は行われず、大幅な縮小=消滅の危機に瀕すると考えられるわけです。
そうした、製造業の大転換が進む中で重要な位置を占めるが、「匠」や「職人」といわれる人々、技術者とそれをマネジメントする人材です。

事業=匠・職人×技術×マネジメント人材 

「匠」や「職人」というと、一見製造業以外のビジネスの場ではなじみが薄い感じがしますが、「テクノロジーでは再現が難しい技術を持った人材」とでも言いかえることができましょうか。皆さんの身近にいらっしゃる仕事ができる方のことを示しているとお考え下さい。機械には再現できない領域にある感覚を持ち合わせた人々は、今後も必要とされ続けるということです。
そうした人々は往々にして、事業感覚を持ち合わせない場合も多いです。これからの日本は、匠、技術をマネジメントして事業を創る人材がもとめられています。

これからのマネジメント人材の要件

仕事は左脳的な要素と右脳的な要素で成り立っています。我々は左脳的な要素、つまり分析であったり定量的な情報を処理する論理的能力と、右脳的な要素、直感や感覚、認識的能力を駆使して仕事に臨んでいるわけですが、「仕事ができる人」はその使い分けのバランス感覚に秀でているのです。
左脳的な分析と右脳的直感を併せ持ち、迅速な意思決定できる人材とでもいいましょうか。

コンサルティングを行っていると、我々に分析させた上でそれらをすべてひっくり返して、直感で「コレ!」と決める経営者がいらっしゃいます。分析に時間をかけた側からすると愕然としますが、その決断が良い結果をもたらすこともあるため、論理的な判断と直感的な判断はどちらも常にできるように、備えておくこと訓練が大切だと考えています。
経験と修練に裏付けられたこのバランス感覚は、未だ機械には再現できない領域にあるため、こうした感覚を持ち合わせた人材は、今後も必要とされるのです。

バランス感覚に秀でたマネジメント人材は、日常の業務のみならず企業戦略を決定する中でも重要な役割を果たします。
事業戦略、マーケテイング戦略、グローバル戦略・・・それら複数の戦略をバランスよく組み合わせた上で、戦略を立案し、執行していくこと、先に、グローバル戦略が日本本社の手を離れた企業の話を挙げましたが、戦略の意思決定の場が国外に移り、国内戦略の占めるウエイトが相対的に低下していったとしても、日本発の戦略を練り、グローバル戦略とバランスを取りながら執行していける能力は求められ続けます。

従来の発想にとらわれて、何に着けてもグローバルに打って出ていくことばかりを考えるのではなく、付加価値が高く、事業を継続できるだけの利潤を稼ぎ出すことができる見通しのある成長分野を見極める、そのためには分析と感覚、論理と直感の組み合わせが不可欠です。
ビジネスにおける適切なバランス感覚とそこからもたらされる意思決定が行えるマネジメント人材は、今も昔も、そしてこれから先も必要とされ続けると考えています。

「違和感の感性」を養う、研修の在り方

一般に「匠」や「職人」と呼ばれる肩書を持つ人が一握りであるように、ビジネスの現場においても、マネジメント人材はほんの一握りです。
また、誰もがみなマネジメント人材が持つ、「テクノロジーでは再現が難しい技術」や感覚を身に着けられるわけではありません。
しかしながら、所謂、「普通の人材」をマネジメント人材に近づける、その人が持つ能力の基盤の底上げすることは可能です。
そのために必要なのは、経営者や管理職が、日常の業務の外にある、異空間にでていく学びの機会を設定することだと考えています。
自身と異なる感性や価値観をもつ異業種や他社との交流を通じて、「違和感の感性」を磨くことは自身の置かれている状況や状態を客観視する、視点の変化をもたらします。

私は長く、階層別研修に携わる中で、学習と経験の反復により「普通の人材」であっても相当なマネジメント人材になることができると確信しています。
研修では、先に申し上げた、左脳的な分析と右脳的直感を座学や演習、グループ討議を通じて体験します。仕事の中で、失敗しながらそうした経験を積むのも一つですが、研修の場であれば失敗というリスクを負うことなく経験することができます。

研修と実践を通じて、仕事の基本形である経営の原理原則を学びながら、講師の実体験を聞き、異業種・他社との交流を図りながら、ビジネスに必要な感覚を研ぎ澄ますことは、今後訪れる様々な変化の時代を経ても、変わらず重要なものであると確信しております。

講師プロフィール

細矢 泰弘(ほそや よしひろ)
(株)日本能率協会コンサルティング
技術戦略センター 参事 シニアコンサルタント
早稲田大学大学院 創造理工学研究科 非常勤講師 

【略歴】
1984年 日本能率協会コンサルティング入社。
研究開発から生産技術・マーケティングまで製造業のバリューチェーンを見渡した経験をもとに活躍中。北米、中国、スウェーデン韓国、メキシコ、オーストラリアと国際プロジェクトの経験も豊富。

【著書・論文】
「技術を核にした事業化展開」で全能連経済産業大臣賞受賞(2006年)「MOT経営入門」(PHP共著・2004年)中国の工場事情(PHP共著、研究開発分野担当・2003年、2008年)、MOT国際会議(PICMET2014)など